高気密・高断熱・長持ち・ローコストな家の施主ブログwith泉北ホーム

2017年10月完成の新築一戸建てマイホーム。エアコン1台で全館風空調。冬暖かく夏涼しい暮らし。積水ハウスより800万安い建築費用、一条工務店より光熱費が安くなる家づくり。

【家づくりのテーマ】
高気密・高断熱・長持ち・低予算

【拙宅の概要】
高気密(C値0.29)・高断熱(Ua値0.39・Q値1.4)・2×6工法・HEAT20のG2グレード達成(6地域)・ZEH認定(ゼロ・エネルギー・ハウス)・パッシブデザイン・窓APW430・APW330真空トリプルガラス・玄関ドア(イノベストD50)・三種換気システム(La-60)・ホウ酸防蟻(エコボロン)・バルコニー金属防水(スカイプロムナード)・改質ゴムアスファルトルーフィング(イーグルガード)・床下断熱(フェノバボード特注120mm厚)・壁断熱(フォームライトSL140mm)・屋根断熱(フォームライト350mm)・断熱カーテン(ダブルハニカムシェード)・フロアコーティング(UVコーティング)・長期優良住宅・省令準耐火構造・許容応力度計算による耐震等級3・耐風等級2・エアコン1台による24時間の全館風空調・エアコン再熱除湿による絶対湿度コントロール・年間光熱費が約10万8000円(太陽光発電の自家消費を含んだ金額)

軒の出はどれだけ伸ばせば良いの?【パッシブ設計】

こんにちは。こんばんは。おはようございます。くろーばーです。


泉北ホームの施主ブログで、軒の出はどれぐらい出せば良いの?という疑問を抱かれている方をお見かけしました。


夏至も近づいて来たところですしメモ書き程度に記事にしてみたいと思います。






軒の出の長さを気にされる理由は大きく2つかと思います。


1つは、デザイン面。


2つ目は、日射遮蔽ですね。



一般的に、軒の出をしっかり出している家の方が落ち着いた風格のある外観になります。大手ハウスメーカーでも良く見かけるデザインですね。


一方で、太陽光パネルをたくさん載せたいなどの理由も相まって、片流れ屋根の割合が増えてきました。片流れ屋根の場合、軒の出がほぼないと言うお家も多く見かけます。


こちらは外観的にシャープな印象がありますね。



今回の記事では、こうしたデザイン面ではなく、温熱環境、つまり夏暑くならないための日射遮蔽という観点で書き進めていきます。



で、どれだけ軒の出を出して日射遮蔽をすべきなの?っていう疑問なんですが、これはおおよその答えが決まっています。


よく軒の出は90cmだとか、1mだとか言われることがあります。ある意味で間違いでもない答えです。


まず、一般的な家で、軒の出の最大値は90cmから1mです。これを超えると軒を支える柱が必要になってきます。


なので、まず難しい説明はいらないという方は、軒の出は90cm(ないし1m)と覚えておいて下さい。(大阪や東京など6地域の場合です)



もう少しきちんと覚えたいのは、軒の出は「窓の高さと軒の出が10:3」の比になるように、ということです。


例えば、高さが2mある大きい掃き出し窓と、高さが1mほどしかない腰窓では、日射を遮るのに必要な軒の出が違うわけですね。


もちろん窓の高さが高いほど、軒の出の長さが必要になります。




窓の高さが無ければ防げていた日差しでも、






窓の高さが高ければ、下の方はしっかり日差しが入ってきて、室内が熱くなってしまう訳ですね。





・・・我ながらヒドいイメージ図ですね(笑)
初めてiPadのお絵かき機能を使ったのでお許しを。








で、次に意識したいのが、先ほどの定義についてです。
窓の高さと軒の出は10:3とありますが、正確には、窓の底辺から軒までの長さが10です。


つまり、ここが10ではなく、







ここが10という訳です。











なので、10:3とは、





こういう設計が正解というわけです。


軒、あるいは後付けの軒(コンバイザー等)が、窓の上辺に近いほど軒の出は短くて済むということですね。




はい。
ここで日射遮蔽の中級編は終わりです。


一般の方はこの辺りでお帰りくださいませ。
ここから先はマニアな方だけで大丈夫です(笑)









はい。
一般の皆様はいらっしゃいませんよね?(笑)


では、ここからは家づくりにどっぷり浸かってしまった方だけの話ということでよろしくお願いします。



さて、ではどうして、この窓の高さと軒の出が10:3という比になるのか考えてみましょう。


日射を遮りたいのは当然、暑い夏ですよね。
冬は逆に日差しを取り入れたい訳ですから、むしろ軒の出がない方が良い。建築費用的にもない方が安上がりですしね。


で、どれだけ軒の出を出せば良いのかは、まず太陽高度の最大値を考えると良いわけです。
つまり、夏至の日ですね。


緯度によりますが夏至の日の南中高度は78.4°。


窓まわりを図形的に考えると、こんな感じ。











このままでは少し考えにくいので、もっと簡単な数字で考えてみましょう。
・・・そう、きっと多くの方が高校生の時に苦しんだ(私だけ?)三角関数で考えやすいように!!



高校の数学で一番基本的な数値で置き換えてみました。(賢い皆様は私の知能レベルに合わせてください(笑)





南中高度60°なので、おおよそ春分・秋分の日ぐらいのイメージですね。
1階に設けた高さ2mの掃き出し窓としてイメージすると、こんな感じ。






この数値の場合、辺の比が1:2:√3・・・・と高校生の時にイヤイヤ勉強した記憶があります(笑)









今回は高さ2mの掃き出し窓と仮定するので、こんな感じ。






計算すると、こんな感じ。







もし、春分の日、秋分の日あたりの日の正午に日射遮蔽をしようとすれば、116cmほどの軒の出が必要になるということですね。




じゃあ、一年の中で最も太陽高度が高い夏至の日(6月下旬)がどうなるかというと、sin11.6°になるので、約40cmの軒の出で良いことになります。(正午時点)


しかし、日本で一番暑いのは7月や8月ですよね。
太陽高度が一番高い日と、実際に最も暑い日ではズレがあるわけです。


大阪の過去の月別平均気温を調べてみると、8月が最も暑い月になっています。


*左の欄から1月、2月、3月・・・です。




日本で一番暑いのは平年であれば、8月2日から9日の1週間です。
間をとって8月5日の太陽高度を調べてみます。


北緯35°として、太陽高度の推移は下の通り。






南中高度をみると、こんな感じ。





およそ72°ですね。


この時、日射遮蔽に必要な軒の出は約60cm。


大阪で冷房が必要になるのが家庭によりますが9月いっぱいは使うとして、10月1日の南中高度を調べてみましょう。



1日の推移はこんな感じで、







南中高度はこんな感じ。






約52°ですね。
これだと何と、軒の出が124cmも必要な計算になってしまいます。




実はここが結構難しい問題で、実務者の間で「3月9月問題」と呼ばれているそうです。


大阪にいると、9月の間はまだ残暑が厳しいので、しっかり日射遮蔽したい。
でも、太陽高度が同じ3月はまだ寒いので日射取得したい。


軒を伸ばせば日射取得が難しくなるし、短くすると日射遮蔽が難しくなる。
どちらを取るのか、実は軒の出の長さって奥が深いものということに気がつきます。


高気密高断熱の最高峰であるパッシブハウスの認定を受ける際に必要となる、冷暖房の負荷を計算されている実務者の方は、こうした所を計算しながら設計されているのでしょうね。


結論、必要な軒の出は敷地条件や地域(地域区分)、窓の上辺から軒までの距離、窓の高さ、窓の設置方位などによって変わるということになります。






ただ、最も少なくても40cmは必要ですし、これは最低限度の数値です。実際には正午だけでなく、それ以外の時間帯の遮蔽も必要ですから、やはり1mほどは必要になってきます。


なので原則、掃き出し窓など2mクラスの窓には、付けられる最大の軒の出を付けておくのが素人計算としては正解かと思います。


建築費用を考えると、軒のためだけに柱を立てるのはコストがかかりすぎるので、通常であれば、90cmないし1mの一般的な工法で伸ばせる最大の長さにしておくのが良いのかと思います。


1mぐらいの腰窓でも、60cmほどは最低でも必要になります。(窓の上辺から軒までの距離によります)



こうして考えてみると、南側の窓、特に1階に設けることが多い掃き出し窓には思っている以上に長い軒の出が必要ですね。


また、パッシブハウスで時々見かける外観で、南側の外壁の東西に控え壁?のような設計をしているのを見ますが、太陽高度が低い季節や時間での日射遮蔽を狙っているものなのかなと推測します。


(このパッシブハウスの場合は、バルコニーを設けるための物かもしれませんが。ついでにいうとバルコニーの奥行きを出して1階の掃き出し窓に十分な日射遮蔽を与えているのカモですね。)


一度設計すると、太陽は毎年同じように家を照らしますから、こうした日射をコントロールする家づくりは本当に大切ですね。


実際の設計では、

地域区分

敷地条件


窓の大きさや数

外構の植栽


アウターシェード

ルーバー機能付きシャッター


隣接する建物の状況


などの条件によって変わりますから、やはり家づくりは技量の高い担当者に設計してもらいたいですね。


じゃないと、高校の数学で赤点を取っていた私が三角関数なんかを使わなくてはいけなくなるので!(笑)




今日は長々と書いてきましたが、マニアックなところはともかく、しっかり軒を出して日射コントロールをしたいですね。


こうしてみると一階の主になるリビングの大きな窓の二階部分に奥行きを出したバルコニーを設けて日射遮蔽に活用するというのは非常に有効ですね。(柱が必要になるかと思いますが)


あるいは昔ながらの日本家屋で縁側があり、しっかり軒が出ているのも、日射遮蔽がしっかり考えた上での設計だったのでしょうね。


昔はエアコンもないし、雨が降っても、暑さと湿気対策のために通風しないといけなかったでしょうし、雨対策としても長い軒が必要だったのでしょう。


なんだか、いろいろ繋がっていきますね。


それでは皆様、快適な家づくりになりますように!

×

非ログインユーザーとして返信する